「生き心地の良い町」

読書記録


以前一度読んだ本のことを思い出し、再読したい気持ちになった。

「生き心地の良い町」(岡檀)








この本は、著者のフィールドワークによる自殺希少地域の特徴をまとめた本なのだけれど、なぜ再読したいと思ったかというと、先日某キャスで、今の時代の生きづらさや、これから先に希望が持てない等のテーマについて考える中で、確かにそういう部分はあるだろうと思うし、そして自分事として考えてみても同様に感じる部分もあり、それについての解決策を自分なりに考えたものの、あまり現実可能そうな案が思い浮かばなかったからだ。

文中では、フィールドワークの結果分かった自殺希少地域の特徴について、主に5つの要素を上げている。

・いろんな人がいてもよい、いろんな人がいたほうがよい
・人物本位主義をつらぬく
・どうせ自分なんて、と考えない
・「病」は市に出せ
・ゆるやかにつながる

どれも「なるほど」と思うものだし、本に記載されているエピソードを読むと具体的で分かりやすい。そして著者の真摯な姿勢にも心打たれた(特に、自殺が多い地域への視点への言及や心配りなど)。そう、こういった本を表面的に読むと、共感をした人はもろ手を挙げて賛成し、そしてその対極にある要素は「悪い」と断じてしまう可能性があるのだけれど、決してそういうわけではないのだ。どの視点から見るかで、良し悪しは変わっていく。

この5つの要素の中で特に今回考えたものが、「どうせ自分なんて、と考えない」というところで、本の中では(確か?)「自己効力感」の繋がりで説明がされていた。また、「いろんな人がいてもよい、いろんな人がいたほうがよい」の部分について、前半だけだと片手落ちで、後半までが実感できること(つまり利益を感じること)が一つ大きなポイントなのではないかとも感じた。文中では、「合理性」や「賢い」という言葉で表現されていたけれど、他者や社会軸としてではなく、「そのほうが自分にとってもお得(=生きやすい)」と実感して「そうあること」には力強さを感じる。

自分のことを振り返ったりもできる、良い本だった。オススメ。

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