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「妖怪セラピー」当事者研究とナラティヴ・アプローチの異同

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当事者研究をはじめてもう2年くらいが過ぎたが、先日お知り合いの方が(おそらく)当事者研究と妖怪セラピーを融合させたワークを実施されていたのを、フェイスブックを通じて目にした。そこでは、最後の「妖怪」の絵がアップされていたのだけれど、なんともユニークなものだった。

このときはじめて「妖怪セラピー」なるものを耳にし、「『妖怪』という枠組みで当事者研究をすること」を、いつかしてみたい、と思うようになった。

紹介いただいた『妖怪セラピー』(芥子川ミカ著)は、今は絶版になっているのか、かなり値が張るので購入は諦めた。その代わり、同じ著者の方が書かれた『体感絵本 妖怪セラピー』(芥子川ミカ 明石書店)を見つけたので、そちらを購入。

副題に「心がふわっと楽になるナラティヴ・アプローチ入門」と書いてあったので、なんとなくそのあたりにあるんだろうな、とは思っていた。本が手元に届く前に「妖怪セラピーで当事者研究をしようと思う」ということを職場で口にした際に、同僚から、「外在化みたいなのですか?」と言われ、「たぶんそんな感じなのかな~」と答えたのだけれど、いくらかの違和感が残った。

到着した本を開いてみると、中にはナラティヴ・アプローチが発想の起源であることが書かれており、外在化の話も記載されていた。ワークに取り組むと絵本が作られていく仕組みになっており、わかりやすく、とても素敵な本!このエッセンスを取り入れながら、当事者研究の枠組みで、そして別のアイデアも思い浮かび、できるかどうかまだ分からないけれどワークのイメージが少しずつ形作られていく。

ただ、先に書いた「違和感」の種が何だったのか、読んでみていくつかまとめることができた。1つ目は、「妖怪という存在の捉え方」について。2つ目は「当事者研究における外在化の位置づけ」についてだった。

1つ目の「妖怪という存在の捉え方」について、ナラティヴ・アプローチが発想の起源になったことは、想像に難くない。たとえば、マイケル・ホワイトの『ナラティヴ実践地図』などにも記載があるように、自分を困らせる存在(?)をあるキャラクターのような存在として外に取り出し、それを見つめたりそれについて語り、考えていく「外在化」と呼ばれる方法は、ナラティヴを知っている人であれば思い浮かびやすいだろう。私も同僚からの質問があった際、それが思い浮かんだのだけれど、最初に「当事者研究と妖怪セラピーを融合させたワーク」に感じたドキドキ感は、それだけだとはいえず、そこにあったのは「妖怪」という存在の特異性だったように思う。

似たようなものとして、「おばけ」「幽霊」「悪魔」「神話」など世界に類する存在があると思うけれど、「妖怪」自体は日本独自の概念だろう。民俗学の分野で研究されているのではないかと思うけれど、日本に生まれた「妖怪」は、それ独自の意味をもつ。このあたりはっきりと定義はできないかもしれないけれど、日本人が抱く「妖怪」という概念、そこに見るもの、なぜ妖怪が生まれ、どのような形として存在し、どう変容し、生き続け、そして日常から離れていってしまったのか、つまり社会的存在としての「妖怪」というものがあり、「ナラティヴ・アプローチ」の外在化の一手法として捉えるよりも、「妖怪」という社会的文脈と個人内の文脈を「妖怪」という形で外在化するところが、この妖怪セラピーの可能性にも繋がる部分ではないだろうか、と感じた。

2点目の「当事者研究における外在化の位置づけ」について、こちらも同僚に言われてみて、「そういえば当事者研究の『自己病名』って外在化だよな~」と思った。自分の中の困りごと、苦しめるもの、悪さをするものを、「自己病名」という形でその人オリジナルのユニークな病名を付け、そのメカニズムを見つめていくのは当事者研究の醍醐味だろう。つまり今回はこれが「自己病名」→「妖怪名」となるわけで、そうすると「外在化」をしていることにはなるだろうけれど、「当事者研究の「自己病名」の考え方の背景には、「外在化」という捉え方、考え方があります」と言い切ってしまうのには、うーん、となってしまう。ここはやっぱり、「専門知からの脱却」だろう。

当事者研究も、ナラティヴ・アプローチも、妖怪セラピーも、その分野に腰を据えて、きちんと勉強しましたよ、複数の視点や考え方についても検討をしましたよ、とは言えないので、考え方の前提自体が間違っていることも多分にあるのだと思うけれど、私自身がこの3者において、本質的に大切にしていること、したいこと、今注目していることに、ついては整理ができたのでよかった。

ナラティヴ・アプローチについては、その人のストーリー、語りの力やディスコースの検討、当事者研究については、専門知や向上、成長、回復に類する文脈からの脱却、妖怪セラピーについては「妖怪」という社会的多面的存在と個人内の文脈との相互作用(?)のようなもの、かな?

まあ、いいか。やってみよう!
著者の芥子川ミカさんは、京都にお住まいらしい。いつかお会いすることができるだろうか。









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