旅(travel)

ハノイにあって思うこと②

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ハノイから戻って3日が過ぎ、断片的に思い出す光景がある。

前の投稿でも書いたのだけれど、ハノイの街は観光地化が進んでいるとはいえ、ほとんどの道路に信号機がなく、車とバイクと人が縦横無尽に行き交っている。白い、横断歩道がある場所でさえ、そうなのだ。

2階にあるカフェからその景色をみているときに、道路を渡ろうとしている片足がない青年を目にした。スケボーみたいなものに腰掛け、片足と片腕を使って、渡ろうとしていた。「たまに車がくる」とかいうレベルではない。常に車とバイクが行き来している中を、渡っていくのだ。

「無茶でしょ」

だって、私だって怖いのだ。一人で渡ることはできず、手を繋いで渡ってもらった。自分に向かってやってくる車とバイク。その「視線」を受けながら、コミュニケーションをとって(いや、強い意思表示をしているとみるべきか?)渡る芸当は、私には難しい。どうしても怖さがでてしまうが、怖さや不安、焦りにより、歩くペースが変わることこそが一番危険らしく、「無になれ」と唱えながら、怖さを生むものが視界に入らないようにして渡っていた。

そして、スケボーに座っているということは、視野がかなり違うはず。車から見えなかったら、どうするんだ。

でも、みごとに渡っていった。片足と片腕を使って、車やバイクが来る方向に視線を向けて、少しずつ前に進み、渡っていったのだ。

それはとても日常的な風景だった。周囲の人が、何か過度に動くわけではない。同じだったのだ。

友人曰く、そもそもスピード自体があまり出ていないので、事故にあったとしても、「こする」くらいで、死亡事故などは耳にしたことがないらしい。だとしても、頻繁ではないにしても、過去に死亡事故や、重傷になったり、片足を失うような事故はきっとあっただろう。ただ、それを過大に受け止めないのが、文化なのかもしれない。

それは、街にいる動物たちにも表れているような気がした。炉端には、お店の人、待っている人、いろいろな人が座ったり、食べたり、飲んだりしている。そして、たぶん飼っているんだろうと思われる犬も多く目にした。だけど、ひもを付けている犬はほとんどいなかった。どの犬も、自分の場所が分かっているみたいで、道に飛び出したりはせず、道の上で、居場所のあたりで、うろうろしたり、寝たりしていた。でもたぶん、飛び出した犬も、引かれた犬も、いたに違いない。それでもきっと、このような在り方がベトナムの、ハノイの文化なのかもしれない。それは、特徴的なものなのかもしれないし、これから変わっていくのかもしれない。

片足がない人も、何度か目にした。日本で見るより頻度が多かった。これは、日本では義足で分からなかっただけなのか、町中に外出する頻度が違うのか、片足を失う頻度が違うのか、わからない。

そして、子供のころ、近所に住んでいたおじさんのことを思い出した。その人は、戦争で片足を失くしていた。よく自転車で出かけていたのだけれど、ひざ下からは肌色の棒のようなものが見えた。もしかしたら、自転車自体が義足替わりだったのかもしれない。出会うと笑顔で名前を呼んでくれ、挨拶をしてくれた。片足で自転車をこぐ姿がとても器用に見えて、私も真似をしてみた。足の裏と足の甲を、交互に使う。誰にも言わず、こっそり練習をしていた気がするけれど、なぜだろう。子供心にも、不謹慎だと感じたのだろうか。お母さんとずっと二人暮らしだった。最期の記憶がいつか、覚えていない。今はその家には、誰もいない。

子ども時代の私に、もう少し思いやりがあったなら。何をしただろうか。何をしなかっただろうか。

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