傍にはいつも本があった。
今ではもうあまり読まなくなってしまったけれど、人生の一時期、自分にとって大きな影響を与えた本を、少しずつ書いていきたい。
『いちご同盟』(三田誠広)
いつ頃読んだのか、はっきりとは覚えていない。
おそらく小学生の頃だったように思う。文庫で読んだのは覚えているけれど、表紙の絵は今のものとは違った。思い出せそうで思い出せない表紙。なんども目にしたのに。
図書館で借りたのではなくて、本屋さんで購入した。でも、なぜこの本を買ったのか、はっきりとは思い出せない。三田誠広さんの本ははじめてだったので、著者で選んだのではないと思う。どこかで、誰かに勧められたわけでもないと思う。なんとなく手に取ったのだろう。
出版年を見ると、1991年とあった。15歳くらいだろうか。じゃあ中学生じゃないか。記憶って本当に当てにならない。
特に大きな期待はなく、読み始めたと思う。そして、読むのを止められなくなって、悲しくて、苦しくて、涙が止まらず。何度も読み返して、その後も、もう読み返さなくなっても、かなり長い間、本棚に置き、「大切な本」の一つとして、背表紙を見つめていた。
中学三年生の良一は、同級生の野球部のエース・徹也を通じて、重症の腫瘍で入院中の少女・直美を知る。徹也は対抗試合に全力を尽くして直美を力づけ、良一もよい話し相手になって彼女を慰める。ある日、直美が突然良一に言った。「あたしと、心中しない?」ガラス細工のように繊細な少年の日の恋愛と友情、生と死をリリカルに描いた長篇。
(BOOKデータベースより)
ストーリーも、もうほとんど覚えていない。「子ども」たちの、若く、悲しく、やるせない話だったことくらい。だけれども、読後、「生きないと」と強く思ったことだけは覚えている。
調べてみると、「いちご同盟」の「いちご」は、登場人物が15歳だったからとのこと。そうか、なんとなく思い出した。私も15歳だったから、同じ同盟に入っているような感覚になったような。
生きたり死んだり、という話は、あまり得意ではない。どちらかというと、本でもドラマでも映画でも、避けて通りたい。しんどいのだ。
うっかり読んでしまったこの本は、私の急所をしっかりとえぐってくれて、しばらくの間立ち直らせてくれなくて、次第にほどよい距離になり、今はストーリーさえも忘れさせてくれた。それでも、何度も本を手にして、表紙を眺め、何かを想っていたことだけは、いまでもはっきりと覚えている。
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