久しぶりに近藤史恵さんの本を読んだ。そして、やっぱりこの方の書く小説が好きだな、と思った。
『ときどき旅に出るカフェ』
主人公の瑛子と、舞台となるカフェのオーナーの円が中心となって、いくつかの短編が描かれている。
円のカフェのコンセプトにあるように、世界各国を旅しているような気分になれるような様々なお菓子や飲み物が紹介されるのも、食べてみたい、飲んでみたいという気分にさせられて興味が惹かれるのだけれど、カフェを中心に繰り広げられる日常のちょっとした事件や不思議、気づきなどのエピソードも、いい感じの重軽さでちょうどよい。最後の短編「最終話」では、今までの話の伏線が回収されたり、新たな驚きもあったりと。
そして内容の面白さだけでなく、文章の運びなどもシンプルで柔らかい。無駄な言葉がなく、必要且つ十分な文章。
味わい深いエピソードと文章。
自分好みの本や作家を見つけたときの喜びは、私にとっては大きい。近藤史恵さんは、私にとってまさしくそんな人だな、と思う。